衛星開発ゼミ / ASTROCAMP-SAT

WEEK 1 事前補講

補講
電子回路の基礎

ソフトを書く前に、まず「動かす対象」であるハードウェアを知る

回路図が読める・基本部品の役割が分かる・マイコンの全体像がつかめる ── ゴールは「マイコンの役割がイメージできる」状態

0.1 今回の位置づけ

いまは「原理を理解する」フェーズの入り口

Week 0 で共有:本ゼミのテーマは「根拠を持ったエンジニアリング」
最終ゴールは、太陽方向を検知し姿勢を制御し撮影し、画像を地上局へ送る模擬衛星
Week 1 は Pico で「Lチカ」を深追いし、ソフトがハードを叩く境界を見る
今回の補講は、その Week 1 で前提となるハードの土台を先に固める
模擬衛星システム構成図
今回の最終到達目標=模擬衛星システムの全体像
補講 電子回路の基礎

0.2 ソフトウェア開発で電子回路を学ぶ目的

Lチカは意味を知らなくても動く。だが「わかって書く」力を、今のうちに

Lチカのコードは真似れば動いてしまう。だが実際には「特定のピンに電圧を出せ」とハードへ命令している──動く理屈は物理の側にある。

1行のコード値を書くgpio_put(PIN, 1) と命じる
レジスタメモリへ書き込み特別なメモリのビットが変わる
ピン電圧が変化0V → 3.3V へ
LED点灯物理現象として現れる
この先の姿勢制御や通信は真似だけでは動かない。一番やさしいLチカのうちに「コードが起こす物理現象まで分かって書く」型を身につける ──「根拠を持ったエンジニアリング」のソフトから見た入り口
補講 電子回路の基礎

0.3 今日の流れ

各部品の役割を押さえ、最後にマイコンの全体像へ

 ① → ⑥ の順に、部品・信号・マイコンへと進んでいく
補講 電子回路の基礎

SECTION 1 / 回路の表現方法

回路図は接続情報だけを描いた図(Schematic)

資料やデータシートは、すべて回路図で書かれている
現物を見なくても「何と何が繋がっているか」が分かる。読めないと、データシートから情報を取り出せない
右は模擬衛星のADC(Analog-to-Digital Converter、MCP3008)。記号だけで全部表現されている
模擬衛星のADC MCP3008 の回路図
実際に使うADC(Analog-to-Digital Converter、MCP3008)の回路図。+3.3V・GND・SPI・コンデンサが記号で描かれている
補講 電子回路の基礎

1.1 実体配線図 ⇔ 回路図

見た目(実体)と論理(回路図)は別物

実体配線図 Layout

ブレッドボード上の実体配線

部品の形・位置・配線の取り回しまで、現物に忠実に描く。

回路図 Schematic

LED回路の回路図

記号に置き換え「電気的に何と繋がるか」だけを描く。
線の長さや配置に意味はない。

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1.2 回路記号

部品を抽象化した「記号」で描く

部品ごとに決まった図記号がある

抵抗の記号抵抗
コンデンサの記号コンデンサ
ダイオードの記号ダイオード

記号を使うから、誰が描いても・どの国でも同じ回路図として読める

同じ「抵抗」でも規格に新旧がある

新JISの抵抗記号
新JIS(C 0617)
IEC準拠・長方形
旧JISの抵抗記号
旧JIS(C 0301)
ギザギザ

記号には「方言」がある。どちらを見ても戸惑わないように

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1.3 一周のループと VCC / GND

ループを VCC と GND で切り離して描く

一周のループ

一周のループとして描いたLED回路

電池の+から出た電流が、抵抗とLEDを通り−へ帰る。
電流は閉じたループでしか流れない。

VCC / GND で分離

VCC/GND記号で切り離して描いたLED回路

同じ VCC どうし・同じ GND どうしは、線で結ばなくても繋がっているとみなす。「ここで繋がっている」という表現

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1.4 GND = 電圧を測る基準点

電圧は「基準からの高さ」=相対的な量

電圧は一点では決まらず、必ず2点間の電位差として決まる
回路では GND を 0V の基準と決め、そこからの高さで各点を測る
比喩:標高は海面を0mと決めた基準からの高さ。GNDがその海面、各点の電位が標高
GNDは絶対的な0ではなく「どこを0Vとするか」で決まる相対的な基準である
GND = 0V(海面) 点A 3.3V 点B 1.8V

GND(海面)からの高さとして各点の電位が決まる。
基準を変えれば同じ点の数値も変わる。

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1.5 ネットとラベル

ネット=繋がりの「実体」、ラベル=それに付ける「名前」

ピン=部品の端子、ネット=ピンどうしの電気的な繋がり、ラベル=そのネットに付けた名前
ネットは名前がなくても「繋がり」として実在する。同じネットの上はどこも同じ電位
同じ名前のラベルどうしは、線で結ばなくても1つのネット(=電気的に繋がっている)とみなす
VCC・GND もラベルの一種。信号線も同じく名前で分離して描く
フォトダイオード(出力側)
フォトダイオード回路図。出力にPD1〜PD4のラベル
PD1 PD2 PD3 PD4
同じネット
ADC・MCP3008(入力側)
ADC MCP3008 回路図。入力にPD1〜PD4のラベル

左の出力 PD1〜PD4 と右の入力 PD1〜PD4 は、線で結ばれていなくても 同じラベル=同じネット だから繋がっている

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まとめ

1.6 この章のまとめ:ここは覚えて次へ

回路図の章の核は、この3つ

回路図は「接続の地図」「何と何が電気的に繋がっているか」だけを記号で描く。実体配線とは別物
GND = 電圧の基準点(0V)電圧は2点間の電位差。GNDを0Vと決めて、そこからの高さで測る
同じラベル = 同じネット同じ名前のラベル(VCC・GND・PD1…)は、線で結ばれていなくても繋がっている
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SECTION 2 / 電子部品

模擬衛星の基本部品を揃える

部品は「種類」ではなく「何のために置かれているか」という用途で覚える。この4つの役割を一言で言える状態を目指す。

炭素皮膜抵抗
抵抗
電流の流れにくさを決める
ダイオード 1N4148
ダイオード
電流を一方向にだけ流す
アルミ電解コンデンサ
コンデンサ
電気を一時的に貯める
パワーMOSFET 2SK4017
MOSFET
電気で動くスイッチ
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2.1 抵抗

電流の「流れにくさ」を決める部品

電流が流れにくくなる=水道の管を細くするイメージ
流れにくさの単位はオーム[Ω]
用途:電流を絞る/電圧を分ける/「基準電位の固定」(Week 2 で扱う)
模擬衛星でも、通信線のプルアップやセンサまわりなど至る所で使う
一般的な炭素皮膜抵抗
一般的な炭素皮膜抵抗
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2.1.1 オームの法則

V = I × R ── 一番よく使う式、覚える価値がある

V = I × R
V
電圧[V]
I
電流[A]
R
抵抗[Ω]
I = V ÷ R電流を求める
R = V ÷ I抵抗を求める
P = V × I消費電力[W]。発熱で壊れないかの判断に使う

直流でも交流でも、抵抗についてはこの関係が成り立つ

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2.1.2 抵抗分圧

抵抗2つで、電源電圧を「比」で分け合う

直列につないだ2つの抵抗には、同じ電流 I が流れる(枝分かれのない一本道)
それぞれの電圧はオームの法則で決まる:V1 = I×R1、V2 = I×R2
中点から取り出す電圧は Vout = Vin × R2 ÷(R1+R2)
例:5V を 10kΩ と 10kΩ で分けると、中点はちょうど半分の 2.5V
抵抗だけで狙った電圧を作れる(掛け算と割り算だけで計算できる)のが要点
抵抗2本を直列にして電源電圧を分ける分圧回路。R1とR2の中点からVoutを取り出す
R1・R2 の中点から Vout を取り出す分圧回路
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2.1.3 模擬衛星の抵抗分圧

電池電圧を分圧してから ADC で測る

マイコンが電圧を数値化するADCには測れる上限がある(模擬衛星は3.3V系)
電池電圧(VBAT)はこの上限を超えることがあり、そのままでは測れない(範囲外・ピンを傷める恐れ)
22kΩ の抵抗2本で1:1に分圧し、半分にした VBAT_SENSE をADCへ渡す
ソフトで読んだ値を2倍すれば元の電池電圧が分かる(分圧比が既知だから復元できる)
測れない大きさを、既知の比で測れる大きさに落とす
模擬衛星MAIN基板の回路図。電池電圧VBATを22kΩ2本で分圧しVBAT_SENSEとしてADCに入れている実例
模擬衛星MAIN基板:VBAT を 22kΩ 2本で分圧し、VBAT_SENSE として ADC へ入れている
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参考

2.1.4 分圧の抵抗値は「トレードオフ」で決まる

定格・消費電力・寄生成分の綱引きで「ほどよい大きさ」に

大前提:どの抵抗も定格(耐えられる電力)の範囲内で使う(P = V² ÷ R
大きくしたい:分圧抵抗には常に電流が流れ続ける → 大きいほど無駄な消費電流が減る(電池で動く模擬衛星では効く)
小さくしたい:大きすぎると配線やADCのわずかな漏れ(寄生成分・2.6)に負けて測定値がずれる
綱引きの結果、模擬衛星では 22kΩ という「ほどよい大きさ」に落ち着いている
「動く」だけでなく「壊れない・狂わない」かまで見るのが、根拠を持つ設計
測定精度と消費電力のトレードオフ
測定精度(低い →) 消費電力(大 ↑) 定格の上限(超えると発熱で壊れる) 抵抗 小(例 1kΩ) 高精度だが電力大 抵抗 大(例 1MΩ) 省電力だが精度が低い 22kΩ(採用) 精度と電力の両立点 理想(左下) =省電力かつ高精度
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参考

2.1.5 オームの法則は「経験則」

V = I × R は万能の真理ではなく近似

電磁気の根本原理はマクスウェル方程式とローレンツ力(深入りしない)
オームの法則は、金属など「ふつうの物質」で成り立つ経験則
電界に押された電子が格子に衝突しながら進む。衝突のしやすさが抵抗(古典的なイメージ)
半導体(まさにLED)では成り立たない → 電圧に比例せず、特殊な曲線を描く
金属内の自由電子のドリフト
電界 E e⁻ 全体としてゆっくり一方向へドリフト(衝突の多さ=流れにくさ)
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2.2 ダイオード

電気の「逆流防止弁」

順方向(決まった向き)には流すが、逆方向には流さない
極性(向き)があり、つなぐ向きを間違えると働かない
用途:電源の逆接続からの保護、整流(向きをそろえる)
「一方向にしか通さない」ことが、この部品の存在意義
定番ダイオード 1N4148
整流・スイッチング用の定番ダイオード 1N4148
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2.2.1 LED = 光るダイオード

LEDは、電流を流すと光るダイオードの一種

LED = Light Emitting Diode。ダイオードなので当然、極性がある
順方向に流したときだけ光る(逆だと光らないし、流れない)
順方向電圧 Vf を超えてはじめて電流が流れ始める(この Vf が、後の電流制限抵抗の計算で効いてくる)
模擬衛星のサンセンサ(フォトダイオード)もダイオードの一種
赤色LED OSR5JA3Z74A
この後 2.2.3 の計算に使う赤色LED OSR5JA3Z74A(秋月電子で人気)
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2.2.2 IV特性

抵抗は「直線」、ダイオードは「折れ曲がる曲線」

電圧 V 電流 I 抵抗(直線) Vf ダイオード / LED Vf までほぼ流れず
抵抗:電圧に比例して電流が増える直線(オームの法則どおり)
ダイオード/LED:Vf までほぼ流れず、超えると急に立ち上がる曲線
この急な立ち上がりが、抵抗で電流を制限しないと過大電流が流れる理由
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2.2.3 計算例

LED電流制限抵抗を、オームの法則で決める

問題:抵抗を入れずにLEDを3Vへ直結したら、どうなる?

例:赤色LED「OSR5JA3Z74A」。電源 E=3V、順方向電圧 Vf≈2.0V、流したい電流 I=1mA

抵抗の電圧3V − 2V = 1V(LEDが2V受け持ち、残りが抵抗に乗る)
抵抗値 R1V ÷ 0.001A = 1kΩ
LEDと電流制限抵抗の基本回路
電源・抵抗・LEDが一周のループになっている
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2.2.4 模擬衛星のダイオード

電源の逆流を防ぐ(Picoボード上)

信号の一方通行だけでなく、電源の逆流の防止にも使える
Pico W の電源入力では、+5V → D1 → VSYS(電源)へ入る
このダイオードは、電源の逆流や競合から回路を守る役割
「一方向にだけ流す」性質が、そのまま電源を守る働きに
Pico W の電源入力回路。+5VからD1を経てVSYS
Raspberry Pi Pico W の電源入力回路(実際の回路図)
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2.3 コンデンサ

電気の「小さな貯水タンク」

電荷(電気)を貯めたり放出したりできる。容量の単位はファラド[F]
比喩:水を貯めるタンク。急に水が要るとき、一時的に供給できる
直流(一定の電圧)はある程度貯めると流れなくなるが、変化には敏感に応じる
模擬衛星では主に電源を安定させるために使う
アルミ電解コンデンサ
アルミ電解コンデンサ
補講 電子回路の基礎

2.3.1 コンデンサの主な用途

電圧のふらつきを吸収して回路を安定させる

マイコンやセンサは、動作の瞬間に消費電流が急変する
電源ラインの近くにコンデンサがあると、急変を吸収して電圧を保つ
比喩:バケツリレーの途中に貯水槽を置くと、波が穏やかになる
この用途のコンデンサをデカップリングコンデンサと呼ぶ(ICの電源ピンのすぐ横で、電源の変動から切り離す)
デカップリングコンデンサが電源のふらつきを吸収する図
電源とGNDの間のデカップリングコンデンサが、リプルやノイズを吸収してマイコンへ安定した電源を渡す

※バイパスコンデンサは高周波ノイズをGNDへ逃がす別の役割。構造は同じで「どこで何をするか」で呼び名が変わる

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2.3.2 模擬衛星でのコンデンサ

LDO出力の安定化に 47μF が入っている

模擬衛星は 電池 → LDO(低ドロップアウトレギュレータ)で安定した電源を作る
そのLDOの出力段に 47μF の電解コンデンサを置いて出力を安定させる
電解コンデンサは極性ありなので向きに注意(逆だと壊れる。ダイオードと同じ)
「電源を作る所にコンデンサあり」を、実際の回路で確認できる
模擬衛星のLDO電源回路。出力段に電解コンデンサ
模擬衛星の LDO 電源回路(出力段に電解コンデンサ)
補講 電子回路の基礎

2.3.3 コンデンサの種類

いまは「2タイプある」で十分

無極性 セラミック

セラミックコンデンサ

向きの区別なし。扱いやすい

有極性 電解

アルミ電解コンデンサ

逆向きにつなぐと壊れることがある。向きに注意

選定は模擬衛星ではハードが設計済みなので理解しなくてよい。将来選ぶ場面が来たら、データシートや定番構成を見ればよい

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QUIZ

2.3.4 抵抗とコンデンサをつなぐとどうなる?

充電時、コンデンサ電圧はどんな曲線で立ち上がる?

RC回路(抵抗とコンデンサを直列に電源へ)
RC回路。コンデンサは最初 0V。ヒント:空のタンクに水を入れ始めると…
A垂直に跳ね上がる
B直線的に上がる
Cなだらかに飽和
Dずっと 0V のまま
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2.4 MOSFET

電気信号で ON / OFF できるスイッチ

3本の端子。うち1本(制御端子)の電圧でON/OFFを切り替える
ここで H/L を使う:デジタルは電圧を2段階──H(High=電源電圧の側)と L(Low=GNDの側)──で表す(詳しくは後半で)
制御端子を H にすると2端子間が導通、L にすると遮断(タイプにより逆もある)
物理スイッチと違い、マイコンの信号で高速にON/OFF。まずは「電圧で操作する蛇口」と理解すればよい
MOSFETを電圧で操作する蛇口にたとえた図
ハンドル=ゲート(制御端子)。H で開いて電流(水)が流れ、L で閉じて止まる
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2.4.1 Nch と Pch

2種類あることが CMOS の鍵

Nチャンネル

H で導通
G ゲート H/L で ON/OFF を切り替える入力
NチャンネルMOSFETの記号
D S 電流

Pチャンネル

L で導通
G ゲート H/L で ON/OFF を切り替える入力
PチャンネルMOSFETの記号
D S 電流

NchとPchは互いに逆の動作。この「逆の性格をもつペア」が、後で出てくる CMOS(Complementary MOS)の材料になる

補講 電子回路の基礎

2.4.2 模擬衛星のMOSFET

基板上になく、マイコンの「中」にある

模擬衛星の基板に、単体(ディスクリート)のMOSFETは載っていない
だが Pico の中身(RP2040)は、無数のMOSFETで構成された CMOS
つまり「意識しないが、最も大量に使っている部品」がMOSFET
今日は回路記号と「スイッチ」のイメージだけ押さえれば十分
模擬衛星の頭脳 RP2040 チップ
模擬衛星の頭脳 RP2040。この中身が無数のMOSFET(CMOS)
補講 電子回路の基礎
参考

2.4.3 なんでMOSFETっていうの?

名前が、構造と動かし方をそのまま表している

Metal- Oxide- Semiconductor Field-Effect Transistor
Metal(金属)=ゲート電極の層
Oxide(酸化物)=絶縁膜の層
Semiconductor(半導体)=シリコン基板
Field-Effect(電界効果)=電圧でスイッチを開け閉めする動かし方
略語に出会ったら、まず元の言葉に戻して意味を調べる。名前は中身を語っていることが多い
プレーナー型MOSFETの構造図。金属・酸化物・半導体が積層した断面
金属(ゲート電極) 酸化物(絶縁膜) 半導体(シリコン基板)
プレーナー型MOSFETの断面。3つの層が名前の前半に対応する
補講 電子回路の基礎
発展

2.5 発展1:キルヒホッフの法則

回路を厳密に計算する基本法則(存在だけ知ればよい)

第一法則(電流)

ある点に流れ込む電流の合計と、流れ出る電流の合計は等しい

I₁ = 3A I₂ = 1A I₃ = 2A 3A = 1A + 2A

第二法則(電圧)

回路を一周すると、電圧の上り下りの合計は 0(山登りと同じ)

出発 一周して戻る +5V −2V −3V +5V − 2V − 3V = 0

模擬衛星の単純な回路では、ここまで持ち出す場面はほぼない。興味があれば:この法則はマクスウェル方程式から導ける

補講 電子回路の基礎
発展

2.6 発展2:回路図に描かれない「寄生成分」

配線そのものにも、わずかな抵抗・容量が潜んでいる

理想(回路図の世界)

ただの「繋がっている線」 抵抗ゼロ・遅れなし

配線は単なる線で、電気は瞬時に、そのまま伝わる。

現実(寄生成分がある)

R L C

配線にもわずかな抵抗があり、配線間には容量が生じる。

ふだんは無視できるが、I2C(Inter-Integrated Circuit)通信や高速な信号では効いてくる。「回路図に載っていない要素が、現実の動作を乱すことがある」と知っておく
補講 電子回路の基礎
発展

2.7 発展3:他の部品は、こうやって自分で学べる

まず全体像をざっくりつかんで体系を持つ。それが一つひとつを深く理解する土台になる

部品は星の数ほどある。最初にやるのは丸暗記ではなく、「どんな部品が、どのあたりにあるか」の地図を持つこと
全体像をつかむのにも、個別を詳しく理解するのにも、AIを適切に使ってよい
ただしAIの答えは仮説。最後は一次情報=公式データシートで裏を取る(Week 0 の原則どおり)
AI以外の入口:部品通販サイト(秋月電子など)のカテゴリ目次は世の中の部品を俯瞰する地図になる/解説サイトの例:detail-infomation.com
一つひとつを詳しく理解する
気になった部品を掘り下げる(データシート・解説記事・AIへの深掘り質問)
全体像・体系をつかむ(土台)
どんな部品が、どのあたりにあるかの地図(通販カテゴリ目次・分野の概観をAIに出させる)
AI 両段で使ってよい。ただし答えは仮説。裏取りは一次情報(公式データシート)で
補講 電子回路の基礎
まとめ

2.8 この章のまとめ:ここは覚えて次へ

部品の章の核は、この3つ

4部品の役割
抵抗
電流を絞る
ダイオード
一方向にだけ流す
コンデンサ
電源を安定させる
MOSFET
電気で動くスイッチ
オームの法則 V = I × R
分圧もLEDの電流制限も、すべてこの式から計算できる
LEDはダイオードの一種
Vfを超えると電流が急に立ち上がる。だから直列に抵抗を入れて電流を制限する
補講 電子回路の基礎

SECTION 3 / 部品の繋げ方

部品が揃ったら、次は「組み立て方」

ここまでで基本部品(抵抗、ダイオード、コンデンサ、MOSFET)が揃った
実際に回路を形にするには、部品を物理的に繋ぐ手段が要る
まず「最終形(基板)」を見てから、「試作の手段(ブレッドボード)」へ進む
補講 電子回路の基礎

3.1 まず完成形:プリント基板(PCB)

製品の回路は、配線が焼き付けられた基板の上に作る

PCB(Printed Circuit Board):銅の配線が板に印刷・固定された基板
部品をはんだ付けすれば、頑丈で再現性のある回路ができる
模擬衛星の本体も、複数のPCBを積み重ねた構造でできている
しかし、PCBは一度作ると配線を変えられない
模擬衛星のメイン基板(MAIN)表面のレンダリング図
模擬衛星のメイン基板(MAIN)表面
補講 電子回路の基礎

3.2 なぜ試作が必要か

いきなり本番基板を作ると、間違いの修正コストが大きい

設計どおりに動く保証は、作ってみるまでない(初回から完璧はまず無い
PCBは修正に時間とお金がかかるので、いきなり作るのはリスクが高い
そこで「何度でも配線を組み替えられる試作の場」が欲しくなる → その答えがブレッドボード
本番基板(PCB)
×配線は焼き付け済みで変更できない
×作り直しに時間とお金がかかる
頑丈で再現性が高い(本番向き)
ブレッドボード
何度でも挿し替えられる
はんだ付け不要。間違えても痛くない
×接触が不安定(試作専用・3.7)
補講 電子回路の基礎

3.3 ブレッドボードの語源と発想

「板に部品を挿して配線する」発想から生まれた

語源:その昔、パンを切る板(breadboard)に部品を留めて回路を組んだ
発想:部品を挿せる板があれば、はんだ付けなしで試作できて便利
さらに発想:よく使う配線が最初から板に入っていれば、もっと便利
この「あらかじめ入った配線」が、現在のブレッドボードの内部構造の正体
ソルダーレスブレッドボード
ソルダーレスブレッドボード
補講 電子回路の基礎
余談

3.3.1 宇宙開発では試作品を「BBM」と呼ぶ

ブレッドボードは、システム工学の用語にもなっている

システム工学では、開発初期の試作モデルを BBM(Bread Board Model)と呼ぶ
語源はまさにこのブレッドボード。形や仕上げにこだわらず、機能が成立するかを確かめる試作
模擬衛星づくりも、まず動く試作から始め、段階的に仕上げる点で同じ発想
BBMBread Board Model粗い試作。機能が成立するかだけを確かめる
EMEngineering Model本番同等の設計で作り、性能を検証する
FMFlight Model実際に打ち上げる本番機

段階を踏んで、粗い試作から本番機へ近づけていく

補講 電子回路の基礎

3.4 ブレッドボードの内部構造

「どの穴とどの穴が最初から繋がっているか」が全て

中央の穴:縦方向(または横方向)の数穴が一列ごとに内部で繋がっている
端の長いライン:電源(+)とGND(−)を流すための共通レール
部品の足を同じ列に挿せば、配線したことになる
繋がっている列・いない列を取り違えると、回路は意図どおり動かない
ブレッドボード内部で、どの穴の列が電気的に繋がっているかを示す図解
内部の導通グループ。同じ色のまとまりが電気的に繋がっている
補講 電子回路の基礎

3.5 配線の例:LED点灯回路を組む

回路図の一周ループを、ブレッドボードの配線に翻訳する

電源レール(+)→ 抵抗 → LED → GNDレール(−)の順に挿す
LEDには極性があるので、向きに注意(逆だと光らない)
同じ列に挿すことで「繋がった」ことになるのを意識する
これが、回路図(論理)を実体配線(物理)へ戻す作業そのもの
ブレッドボード上に部品を挿して組んだLED点灯回路
ブレッドボード上に組んだLED点灯回路(実体配線)
補講 電子回路の基礎

3.6 ショート(短絡)の危険と対策

抵抗なしで電源とGNDが直結すると、過大電流が流れる

危険:ショート

抵抗なし(R ≈ 0) I = V ÷ R → 巨大
ショート=抵抗なしで+と−が繋がること
電池によっては瞬間的に数百Aを流す能力があり、発熱・発火の危険

対策

配線前に繋がりを確認する
電源を入れる前に見直す
安定化電源を使う
安定化電源の電流制限
設定した上限 上限で頭打ちになり、電流が制限される

電流の上限を設定でき、ショート時も電流を制限してくれる

補講 電子回路の基礎

3.7 ブレッドボードを過信しない

試作専用。動いても「次も動く」とは限らない

構造上、接触が不安定で、持ち運ぶと接触不良になりやすい
接触抵抗や配線間の容量が大きく、高速信号や大電流には向かない
長く挿しっぱなしだとバネが弱り、保持力が落ちる
本番で確実に動かすなら、最終的にはPCBやユニバーサル基板へ起こす
ユニバーサル基板 サンハヤト ICB-288
ユニバーサル基板の例:サンハヤト ICB-288
補講 電子回路の基礎
QUIZ

3.8 回路図をブレッドボードに起こす

この回路図のとおりに繋がっているのは、A〜Cのどれ?

問題の回路図:LEDと電流制限抵抗を電源につないだ基本回路
問題の回路図
チェックの観点
・中央の溝の左右は繋がっていない ・同じ列は内部で繋がる ・部品の両足を同じ列に挿すと短絡する
A
選択肢A:ブレッドボードの配線例
B
選択肢B:ブレッドボードの配線例
C
選択肢C:ブレッドボードの配線例
補講 電子回路の基礎
まとめ

3.9 この章のまとめ:ここは覚えて次へ

組み立ての章の核は、この3つ

内部の導通が全て同じ列は繋がり、中央の溝で左右は切れている
+と−の直結はショート過大電流が流れて危険。電源を入れる前に必ず配線を見直す
あくまで試作専用動いても「次も動く」とは限らない。確実に動かすなら基板へ起こす
補講 電子回路の基礎

SECTION 4 / デジタルとアナログ

信号には2種類ある:アナログとデジタル

ここまでは「電流をどう流すか」という物理の話だった
ここからは「電気で情報をどう表すか」という信号の話に移る
マイコンやセンサが扱う信号を理解するための、共通言語を入れる
補講 電子回路の基礎

4.1 アナログ信号

滑らかに連続して変化する量

例:気温、音の大きさ、明るさ。値はなだらかに変化し、中間値が無限にある
模擬衛星のフォトダイオード(光センサ)が拾う「明るさ」もアナログ量
情報が豊かだが、ノイズが乗るとどれが本来の値か分からなくなる
例:本来 2.00V のはずが、ノイズで 2.02V や 1.98V に揺れてしまう
時間 電圧 中間の値をいくらでもとる
連続して滑らかに変化するアナログ波形
補講 電子回路の基礎

4.2 デジタル信号

H と L の2値しかとらない

中間を捨て、電圧を「高い=H=1」「低い=L=0」の2段階だけで扱う
例:3.3V系なら、3.3V付近を H、0V付近を L とみなす
多少ノイズで電圧が揺れても、「高いか低いか」の判定は揺るがない
マイコンの中は、すべてこの H と L の組み合わせでできている
時間 H L 3.3V 0V 2値の間を切り替わる(中間は使わない)
H と L を行き来する矩形波
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4.3 なぜデジタルが選ばれるのか

ノイズに強く、情報を正確に保てる

アナログ + ノイズ

本来の波形 元の値がどれか分からなくなる

中間値がノイズで埋もれると復元できない。

デジタル + ノイズ

判定のしきい値 H L しきい値の上か下かで、H/L を復元できる

HかLかだけなので、少々の揺れでは値が変わらない。

近年は省電力化のため、H の電圧が 5V → 3.3V → さらに低くと下がってきている。だからこそ「どの電圧をHとみなすか」は機器ごとに決まっている(要データシート確認)
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4.4 アナログとデジタルの橋渡し

現実はアナログ、マイコンの中はデジタル。繋ぐのが ADC と DAC

アナログの世界 連続的な電圧(現実) デジタルの世界 H/L の並び=数値(マイコン) 1011 0110 ADC アナログ → デジタル変換 DAC デジタル → アナログ変換
ADC(アナログ→デジタル変換):連続的な電圧を、数値(H/Lの並び)に変換する
DAC(デジタル→アナログ変換):数値を、連続的な電圧に戻す(ADCの逆向き)
模擬衛星では、フォトダイオードの明るさを ADC(MCP3008)で読み取っている
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まとめ

4.5 この章のまとめ:ここは覚えて次へ

信号の章の核は、この3つ

2種類の信号アナログ(連続)とデジタル(H/Lの2値)。デジタルはノイズに強い
橋渡しは ADC と DAC現実の量はアナログ、マイコンの中身はデジタル。ADCがアナログ→デジタル、DACがその逆
Hの電圧は機器ごと模擬衛星は3.3V系。つなぐ前にデータシートで確認する
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SECTION 5 / CMOSデジタル回路

H/L から論理を作る CMOS

ここまでで「MOSFET(スイッチ)」「H/L(デジタル)」が揃った
この2つを掛け合わせると、計算する回路=デジタル回路ができる
この章は短い:CMOSの正体を一目見て、それがマイコンの中身と入出力の正体だと知れば十分
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5.1 CMOS:NchとPchのペアで論理を作る

逆の性格のMOSFETを組み合わせて、H/Lを反転・演算する

CMOS:Nch と Pch を組み合わせた回路方式(今のデジタル半導体の標準)
例:入力 H を入れると出力 L、入力 L を入れると出力 H(NOT=反転
これらを大量に組み合わせると、足し算や記憶など複雑な処理ができる
ここでは「H/Lを操作する素子が作れる」ことだけ分かればよい
入力
H
出力
L
入力
L
出力
H
NチャンネルとPチャンネルのMOSFETをペアにしたCMOSインバータの回路図
CMOSインバータ。入力Hで出力L、入力Lで出力Hに反転する
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5.2 H/Lの組み合わせが、やがて計算になる

単純なスイッチを大量に集めると、やがて計算になる

1個 H が来たら L を返す それだけの単純な動作
数十〜数百個 足し算ができる 論理を組み合わせた演算回路
数千万〜数億個 計算・記憶・判断 これがマイコンのチップの中身
1つ1つは「HならL」程度の単純な動作である
だが膨大に組み合わせると、四則演算も、記憶も、判断もできるようになる
「魔法」ではなく、単純なスイッチの集積が計算を生んでいる
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5.3 マイコンの入出力ピンもCMOSでできている

チップの中身だけでなく、外の回路との接点も CMOS

マイコンの中身は、無数のCMOSの集積だった
外の回路と繋がる入出力ピン(GPIO)も、同じCMOS回路でできている
出力:中のMOSFETがピンを電源側(H)かGND側(L)に繋ぎ替えて、電圧を外へ出す
入力:ピンの電位が H か L かを読み取る
入出力ピンを正しく使うための電気的な作法(Floating・プルアップなど)は、Week 2 の通信で根拠から扱う
マイコンチップ(RP2040)の内部 CMOSの集積(計算・記憶) 入出力ピンの回路(これもCMOS) 出力段 入力段 MOSFETがピンを 電源側/GND側へ繋ぎ替える ピンの電位が H か L かを読み取る ピン GPIO 出力(H/L) 入力(H/L) 外の回路 LED・センサ など
チップ内部の計算回路も、外部との接点である入出力ピンも、同じCMOSでできている
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まとめ

5.4 この章のまとめ:ここは覚えて次へ

CMOSの章の核は、この3つ

CMOS = H/Lの論理を作る逆の性格をもつNchとPchのMOSFETをペアにした回路(インバータはHとLを反転する)
マイコン = CMOSの集積数千万〜数億個が集まってできている。計算は魔法ではなくスイッチの集積
入出力ピンもCMOS外の回路との接点である入出力ピンも、同じCMOS回路でできている
入出力ピンの電気的な作法(Floating・プルアップ/プルダウンなど)は、Week 2 の通信で根拠から扱う
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SECTION 6 / マイコンの全体像

電気回路をソフトで操る存在

部品(抵抗、ダイオード、コンデンサ、MOSFET)と、信号(H/L)が揃った
残る問題は「これらをどうやってソフトウェアから動かすのか」
その接点に立つのがマイコン。今日の最後のテーマ
補講 電子回路の基礎

6.1 マイコンは「回路とソフトの通訳」である

「ソフトでハードを動かしたい」という要求から生まれた

我々がやりたいこと:センサを読み、計算し、モーターやLEDを制御する
それを毎回、専用の論理回路で作るのは大変で、変更もきかない
そこで「プログラムで振る舞いを変えられる小さなコンピュータ」を回路に置く
これがマイコン。ソフトの命令を、ピンの電圧という物理に翻訳してくれる
ソフトウェアの世界
「LEDを点けろ」という命令
gpio_put(PIN, 1)
マイコン
通訳
プログラムで振る舞いを変えられる
ハードウェアの世界
ピンの電圧が 0V → 3.3V に変わり
LEDが実際に光る
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6.2 マイコン = CPU・メモリ・入出力が1チップ

コンピュータの機能を1つのチップに収めたもの

マイコン(マイクロコントローラ):CPU、メモリ、入出力を1チップに統合
特に入出力の機能(ペリフェラル)が豊富なのが特徴
模擬衛星の頭脳 Raspberry Pi Pico W も、このマイコンの一種
※コンピュータの内部の仕組みや動作原理は Week 1 の講義で詳しく扱う
1つのチップ(例:RP2040)
CPU
計算する
メモリ
プログラムとデータを保持する
入出力(ペリフェラル)
外の回路と繋がる。マイコンではここが特に豊富
GPIO ADC I2C SPI UART
パソコンでは別々の部品が、マイコンでは1チップに収まっている
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6.3 模擬衛星でのマイコンの役割

Pico W は各サブシステムを束ねる司令塔(C&DH)

C&DH(データ処理系):Pico W が全体の司令塔
ADCS(姿勢制御系):光センサやジャイロを読み、モーターを制御する
Payload(ミッション系):カメラを制御し、画像を取得する
COMM(通信系):Wi-Fi で地上局とデータをやり取りする
これら全てを、Pico W というマイコンがソフトウェアで束ねる
模擬衛星システム構成図。Pico W がC&DHとして各サブシステムを束ねる
模擬衛星システム構成図
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6.4 マイコンチップ単体と開発用ボードは別物

「チップ」はCPUそのもの、「ボード」はそれを使いやすくした基板

マイコンチップ単体 RP2040

チップ単体:RP2040(QFNパッケージ)

演算の本体。これ単体では電源もUSBもなく、使いにくい。
例えるなら CPU

開発用ボード Raspberry Pi Pico

開発用ボード:Raspberry Pi Pico

チップに電源回路、USB、ピンを足したもの。
例えるなら CPUを載せたマザーボード一式

試作はボードで行い、製品化するときはチップ単体を自分の基板に載せる

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6.5 だからデータシートも2種類ある

知りたい情報によって、開くべきデータシートが変わる

チップのデータシート
チップの内部仕様(Week 1 で読む)
ボードのデータシート
どのピンがどこに出ているか、電源の仕様など
スコープの正しいデータシートを開けることが、これからの最初の関門
間違ったほうを開くと、いくら探しても情報は見つからない
Raspberry Pi Pico の電源まわりのデータシート抜粋
ボードのデータシートに載る情報の例(Pico の電源まわり)
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6.6 実機での配線:PicoのGPIOとLEDを繋ぐ

Lチカの物理的な配線をもう一度確認する

用意するもの:Pico Wボード、ブレッドボード、LED、抵抗、ジャンパワイヤ
配線の流れ:Pico WのGPIOピン(例えばGPIO 0番)からジャンパワイヤで引き出す
ブレッドボード上で抵抗を挟み、LEDのアノード(長い足)に繋ぐ
LEDのカソード(短い足)から、Pico WのGNDピンへ戻す
これで「ソフトから電圧を変えられるピン」を使った一周のループ(回路)が完成する
回路図(作図予定) GPIO 0番ピン → 抵抗 → LED → GND
Wokwi で作図し images/led_gpio_schematic.png として配置
GPIO 0番ピンから抵抗とLEDにつないだ回路図
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6.7 ソフトウェアの書き込み:UF2ファイル

ビルドしたソフトをハードウェアに送り込む手順

① ビルド
firmware.uf2
PC上でコードから生成される
② BOOTSEL を押しながらUSB接続
RPI-RP2
USBメモリのように認識される
③ ドラッグ&ドロップ
.uf2 をコピー
認識されたドライブへ入れる
④ 自動で再起動
プログラムが動き出す
あなたの書いたコードで動く
コードを書いてビルドすると、.uf2 という拡張子のファイルができる
Pico W の BOOTSEL ボタンを押しながらPCにUSB接続すると、USBメモリのように認識される
この一連の作業が「マイコンへの書き込み(フラッシュ)」である
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6.8 ソフトウェアからハードを操る

Week 0 で動かした Lチカのコードを、今の知識で見る

// Lチカのコード(抜粋)
gpio_init(LED_PIN);
gpio_set_dir(LED_PIN, GPIO_OUT);
while (true) {
    gpio_put(LED_PIN, 1);
    sleep_ms(250);
    gpio_put(LED_PIN, 0);
    sleep_ms(250);
}
あのコードは「魔法」ではなく、マイコンに物理的な電圧(H/L)を切り替えさせる命令
各行が、どのピンを、出力にして、HかLにするかを1つずつ指示している
この「ソフトから物理ピンの電圧を操る」ことが、すべての制御の基礎になる
ここではコードの意味だけざっくりつかむ。レジスタの仕組みは Week 1、C言語の構文は次の補講で扱う
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6.9 C言語の1行がハードウェアを動かす

それぞれの行が「マイコンへのどんな指示」になっているか

gpio_init(LED_PIN);このピンを使います、という準備
gpio_set_dir(LED_PIN, GPIO_OUT);このピンを「出力」にします、という設定
while (true) { ... }この中をずっと繰り返します(無限ループ)
gpio_put(LED_PIN, 1);電圧を「高い(H=1)」に → LEDが点く
sleep_ms(250);250ミリ秒だけ、そのままの状態で待ちます
gpio_put(LED_PIN, 0);電圧を「低い(L=0)」に → LEDが消える
gpio_put(PIN, 1) マイコンのピン 0V → 3.3V(H) LEDが 実際に光る
C言語の1行が、物理的な電圧の変化とLEDの点灯に直結する
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まとめ

6.10 この章のまとめ:ここは覚えて次へ

マイコンの章の核は、この4つ

マイコン=通訳ソフトとハードの通訳。CPU・メモリ・入出力を1チップに収めたもの
コード=電圧の指示Lチカのコードは魔法ではなく、ピンの電圧(H/L)を切り替える物理的な指示
チップとボードは別物だからデータシートも2種類あり、正しいスコープのほうを開く
マイコンの内部構造や動作原理は Week 1 で扱う
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7. まとめ:今日の内容

部品と信号を揃え、マイコンという接点まで来た

回路図物理の一周ループを、VCC/GND の記号で抽象化した地図
部品抵抗(電流制限)、ダイオード(一方向)、コンデンサ(安定化)、MOSFET(スイッチ)
信号アナログ(連続)とデジタル(H/L)。橋渡しは ADC と DAC
CMOS単純なスイッチの集積が計算を生む。マイコンの中身も入出力もCMOS
マイコンCPU・メモリ・入出力が1チップ。ソフトとハードの通訳
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NEXT / WEEK 1

Lチカを深追いし、ソフトとハードの境界を見にいく

次回やること:Pico を題材に、Lチカのコードが最終的にメモリ(レジスタ)を叩く瞬間を追う
今日の「コード=ピンの電圧を切り替える指示」「データシートのスコープ」が前提になる
今日の宿題は、6章で見た blink のコードを実際に Pico で動かすこと(次のスライド)
分からないことは「キャッチアップの会」で遠慮なく質問する
Week 1 で追いかける流れ
gpio_put(PIN, 1)
C言語の1行
メモリ(レジスタ)の書き換え
← Week 1 で深追いするのはここ
ピンの電圧が 3.3V に
物理現象として現れる
LEDが点灯する

衛星開発ゼミ / ASTROCAMP-SAT

宿題

7.2 宿題:blink のコードを動かしてみる

6章で解説した blink を、実際に Pico で動かす

① 配線する(6.6)GPIO → 抵抗 → LED → GNDLEDのアノード(長い足)とカソード(短い足)の向きに注意
② 書き込む(6.7).uf2 をドラッグ&ドロップBOOTSEL を押しながらUSB接続して現れたドライブへ
③ 点滅を確認(6.8・6.9)LEDが250msごとに点滅コードの1行がピンの電圧を切り替えている
提出
点滅している様子を写真か短い動画で Discord に投稿する
動かないときの切り分け
LEDの向き 抵抗が入っているか 列の導通(中央の溝) GNDに戻っているか 書き込みの成否
動かなくても投稿してよい。切り分けの過程が Week 1 以降の力になる
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付録

画像クレジット​(出典)

resistor.jpgHaragayato(cropped by hidro)/Wikimedia Commons "Metal film resistor.jpg"/CC BY-SA 3.0
diode_1n4148.jpgVonvon/Wikimedia Commons "Diode 1n4148.jpg"/CC BY-SA 3.0
cap_electrolytic.jpgoomlout/Wikimedia Commons "47uf Electrolytic Capacitor.jpg"/CC BY-SA 2.0
cap_ceramic.jpgXofc/Wikimedia Commons "CeramicCapacitor-220nF.jpg"/CC BY-SA 4.0
breadboard.jpgLukeSurl/Wikimedia Commons "Breadboard.JPG"/CC BY-SA 3.0
universal_board.jpgサンハヤト株式会社 ユニバーサル基板 ICB-288 商品ページの商品画像/© サンハヤト株式会社(出典明記のうえ教材で使用)
breadboard_internal.png(ネットからダウンロードする汎用イラスト。取得時に作者・出典・ライセンスを確認し、ここに明記する)
rp2040_chip.jpgThomas Glau/Wikimedia Commons "RP2040 Microcontroller (cropped)"/CC BY-SA 4.0
pico_board.jpgLaserlicht/Wikimedia Commons "Raspberry pi pico.jpg"/CC BY-SA 4.0
led_osr5ja3z74a.jpg秋月電子通商 商品ページ(OSR5JA3Z74A/通販コード111577)の商品画像/© 秋月電子通商(出典明記のうえ教材で使用)
mosfet_2sk4017.jpg秋月電子通商 商品ページ(NchパワーMOSFET 2SK4017(Q)/通販コード107597)の商品画像/© 秋月電子通商(出典明記のうえ教材で使用)
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