Skip to content

模擬衛星の概要とミッション

このページは、開発する模擬衛星が達成すべきミッション要求と、それを実現するときに課される制約をまとめたものです。

どのセンサをどう使って姿勢を推定するのか、どんな制御則で目標方向へ向けるのか、画像をどんなプロトコルでどう分割して送るのかは、ここには書いていません。 それらは要求と制約から導かれる要件であり、各チームが自分たちで洗い出して決める対象だからです。 要求・制約・要件の区別と、要件の洗い出し方は Week 6 宇宙開発とシステムズエンジニアリング で扱います。


1. 模擬衛星の物理的構成と設置方法

Section titled “1. 模擬衛星の物理的構成と設置方法”

模擬衛星は、宇宙空間での姿勢制御や観測ミッションの基本原理を地上で疑似的に体験・開発できるように設計された教育用モデルです。

模擬衛星の外観

全体構成の 3D モデルです(ドラッグで回転、スクロールで拡大縮小できます)。 主要部品を簡易形状で表した見た目重視のモデルであり、基板の外形・穴位置・部品配置は KiCad 設計データの実座標に基づいています。

模擬衛星は、専用のスタンドからハンドスピナーにつながった糸で吊り下げられた状態で動作します。

  • 目的: 地上における摩擦抵抗を極限まで減らし、宇宙空間に近い「微小な力(トルク)で回転・姿勢が変化する」環境を擬似的に作り出します。
  • 動作範囲: 吊り下げられているため、鉛直方向を軸とした水平方向(ヨー軸)の1自由度のみ回転が可能です。ハンドスピナーのベアリングにより、自由な回転が可能になります。

太陽光源と撮影対象(天体模型)の相対位置が分かっている状況で、対象の画像を取得する。

黒紙で囲った「宇宙空間」に模擬衛星を吊り下げ、スマートフォンの光源と天体模型を配置した運用イメージ図

ミッション要求はこの一文だけです。 主語はユーザー(人間)であり、実現したいこと(対象の画像を手に入れたい)だけを述べます。 どう実現するかは要求ではなく、要求と制約から導く要件だからです。

この一文がそのまま達成された状態が、フルサクセスです。 成功の定義(サクセスクライテリア)は要求から導かれるものなので、ここには書きません。 絶対に死守する下限(ミニマムサクセス)と、余剰リソースで狙う発展目標(エクストラサクセス)をどこに置くかは、各チームが定義します。


制約は、要求と並ぶ開発の入力です。 外から課され、チームの判断では変更できない境界条件を指します。

以下は運営が明示的に課す制約であり、制約のすべてではありません。 設計を進める中で「これも制約だった」と気付くものを洗い出すこと自体が、設計という作業に含まれます。

模擬衛星のハードウェアは設計・製作済みで、受講生が構成を変更することはありません。 搭載しているコンポーネントとインターフェースは システム構成とインターフェース、各部品の詳細は コンポーネント詳細 を参照してください。

つまり、要求を実現する手段(何を使って達成するか)は制約として与えられています。 それらをどう組み合わせて要求を満たすかが、各チームの設計判断です。

3.2 運用(打ち上げ)と運用中の制約

Section titled “3.2 運用(打ち上げ)と運用中の制約”

運用は「打ち上げ」という形で行います。 上の運用イメージ図のとおり、太陽を模したスマートフォンのライトと撮影対象の天体模型を置き、黒い紙で囲った「宇宙空間」に模擬衛星を吊り下げて動作させます。

  • 打ち上げの反復: この打ち上げは、時間の許す限り何度でも繰り返せます(宇宙機特有の制約を乗り越えたうえで、高速なイテレーションによる改善を図る設計思想です)。
  • 中は覗けない: いったん「宇宙」に上げると内部を直接観察できず、衛星の状態はテレメトリからのみ得られます。
  • 届くのは電波だけ: 衛星への介入は、地上局からの無線通信を通してのみ行えます。この制約下で修正や介入をどう実現するか(無線経由のソフトウェア更新やコマンド体系の工夫など)は、各チームが実際の宇宙機の手法を調べて設計します。

開発中は、ベアリングで自由回転できる状態のまま吊り下げることを禁止します。 無重力を地上で再現できないため、机の上で自由回転させた実機の挙動は、糸で吊り下げた本番の挙動と一致せず、試行錯誤の照合先になりません。

そのため姿勢制御はモデルベース開発(SILS)で作り込み、実機では機体を固定してモータでリアクションホイールだけを回します。 機体が実際に回るのを確かめられるのは、打ち上げの中だけです。

これらの運用制約は、模擬衛星のミッション要求の一部として定めています。