Week 0 電子回路の基礎
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表紙
衛星開発ゼミ / ASTROCAMP-SAT WEEK 1 事前補講 補講 電子回路の基礎 ソフトを書く前に、まず「動かす対象」であるハードウェアを知る 回路図が読める・基本部品の役割が分かる・マイコンの全体像がつかめる ── ゴールは「マイコンの役割がイメージできる」状態
0.1 位置づけ
0.1 今回の位置づけ いまは「原理を理解する」フェーズの入り口 Week 0 で共有:本ゼミのテーマは 「根拠を持ったエンジニアリング」 最終ゴールは、太陽方向を検知し姿勢を制御し撮影し、画像を地上局へ送る 模擬衛星 Week 1 は Pico で「Lチカ」を深追いし、ソフトがハードを叩く境界を見る 今回の補講は、その Week 1 で 前提となるハードの土台 を先に固める 今回の最終到達目標=模擬衛星システムの全体像 補講 電子回路の基礎
0.2 学ぶ目的
0.2 ソフトウェア開発で電子回路を学ぶ目的 Lチカは意味を知らなくても動く。だが「わかって書く」力を、今のうちに Lチカのコードは 真似れば動いてしまう 。だが実際には 「特定のピンに電圧を出せ」とハードへ命令している ──動く理屈は物理の側にある。 1行のコード 値を書く gpio_put(PIN, 1) と命じる レジスタ メモリへ書き込み 特別なメモリのビットが変わる ピン 電圧が変化 0V → 3.3V へ LED 点灯 物理現象として現れる この先の姿勢制御や通信は真似だけでは動かない。一番やさしいLチカのうちに「コードが起こす物理現象まで分かって書く」型を身につける ──「根拠を持ったエンジニアリング」のソフトから見た入り口 補講 電子回路の基礎
0.3 今日の流れ
0.3 今日の流れ 各部品の役割を押さえ、最後にマイコンの全体像へ ① → ⑥ の順に、部品・信号・マイコンへと進んでいく 補講 電子回路の基礎
1. 回路図
SECTION 1 / 回路の表現方法 回路図は接続情報だけを描いた図(Schematic) 資料やデータシートは、すべて 回路図 で書かれている 現物を見なくても 「何と何が繋がっているか」 が分かる。読めないと、データシートから情報を取り出せない 右は模擬衛星のADC(Analog-to-Digital Converter、MCP3008)。 記号だけで全部表現 されている 実際に使うADC(Analog-to-Digital Converter、MCP3008)の回路図。+3.3V・GND・SPI・コンデンサが記号で描かれている 補講 電子回路の基礎
1.1 実体配線と回路図
1.1 実体配線図 ⇔ 回路図 見た目(実体)と論理(回路図)は別物 実体配線図 Layout 部品の形・位置・配線の取り回しまで、現物に忠実に描く。 回路図 Schematic 記号に置き換え「電気的に何と繋がるか」だけを描く。 線の長さや配置に意味はない。 補講 電子回路の基礎
1.2 回路記号
1.2 回路記号 部品を抽象化した「記号」で描く 部品ごとに決まった図記号がある 抵抗 コンデンサ ダイオード 記号を使うから、誰が描いても・どの国でも同じ回路図として読める 同じ「抵抗」でも規格に新旧がある 新JIS(C 0617) IEC準拠・長方形 ⇔ 旧JIS(C 0301) ギザギザ 記号には「方言」がある。どちらを見ても戸惑わないように 補講 電子回路の基礎
1.3 ループとVCC/GND
1.3 一周のループと VCC / GND ループを VCC と GND で切り離して描く 一周のループ 電池の+から出た電流が、抵抗とLEDを通り−へ帰る。 電流は閉じたループでしか流れない。 VCC / GND で分離 同じ VCC どうし・同じ GND どうしは、線で結ばなくても繋がっているとみなす。「ここで繋がっている」という表現 補講 電子回路の基礎
1.4 GNDとは
1.4 GND = 電圧を測る基準点 電圧は「基準からの高さ」=相対的な量 電圧は一点では決まらず、必ず 2点間の電位差 として決まる 回路では GND を 0V の基準 と決め、そこからの高さで各点を測る 比喩:標高は 海面を0m と決めた基準からの高さ。GNDがその海面、各点の電位が標高 GNDは絶対的な0ではなく「どこを0Vとするか」で決まる 相対的な基準 である GND = 0V(海面) 点A 3.3V 点B 1.8V GND(海面)からの高さとして各点の電位が決まる。 基準を変えれば同じ点の数値も変わる。 補講 電子回路の基礎
1.5 ネットとラベル
1.5 ネットとラベル ネット=繋がりの「実体」、ラベル=それに付ける「名前」 ピン =部品の端子、 ネット =ピンどうしの電気的な繋がり、 ラベル =そのネットに付けた名前 ネットは名前がなくても「繋がり」として実在する。同じネットの上はどこも同じ電位 同じ名前のラベルどうしは、線で結ばなくても1つのネット (=電気的に繋がっている)とみなす VCC・GND もラベルの一種。信号線も同じく名前で分離して描く フォトダイオード(出力側) PD1 PD2 PD3 PD4 同じネット ADC・MCP3008(入力側) 左の出力 PD1〜PD4 と右の入力 PD1〜PD4 は、線で結ばれていなくても 同じラベル=同じネット だから繋がっている 補講 電子回路の基礎
1.6 この章のまとめ
まとめ 1.6 この章のまとめ:ここは覚えて次へ 回路図の章の核は、この3つ ① 回路図は「接続の地図」 「何と何が電気的に繋がっているか」だけを記号で描く。実体配線とは別物 ② GND = 電圧の基準点(0V) 電圧は2点間の電位差。GNDを0Vと決めて、そこからの高さで測る ③ 同じラベル = 同じネット 同じ名前のラベル(VCC・GND・PD1…)は、線で結ばれていなくても繋がっている 補講 電子回路の基礎
2. 基本部品
SECTION 2 / 電子部品 模擬衛星の基本部品を揃える 部品は「種類」ではなく 「何のために置かれているか」という用途 で覚える。この4つの役割を一言で言える状態を目指す。 抵抗 電流の流れにくさを決める ダイオード 電流を一方向にだけ流す コンデンサ 電気を一時的に貯める MOSFET 電気で動くスイッチ 補講 電子回路の基礎
2.1 抵抗
2.1 抵抗 電流の「流れにくさ」を決める部品 電流が流れにくくなる= 水道の管を細くする イメージ 流れにくさの単位は オーム[Ω] 用途:電流を絞る/電圧を分ける/「基準電位の固定」(Week 2 で扱う) 模擬衛星でも、通信線のプルアップやセンサまわりなど 至る所で使う 一般的な炭素皮膜抵抗 補講 電子回路の基礎
2.1.1 オームの法則
2.1.1 オームの法則 V = I × R ── 一番よく使う式、覚える価値がある V = I × R V 電圧[V] I 電流[A] R 抵抗[Ω] I = V ÷ R 電流を求める R = V ÷ I 抵抗を求める P = V × I 消費電力[W]。発熱で壊れないかの判断に使う 直流でも交流でも、抵抗についてはこの関係が成り立つ 補講 電子回路の基礎
2.1.2 抵抗分圧
2.1.2 抵抗分圧 抵抗2つで、電源電圧を「比」で分け合う 直列につないだ2つの抵抗には、 同じ電流 I が流れる(枝分かれのない一本道) それぞれの電圧はオームの法則で決まる: V1 = I×R1、V2 = I×R2 中点から取り出す電圧は Vout = Vin × R2 ÷(R1+R2) 例:5V を 10kΩ と 10kΩ で分けると、中点はちょうど 半分の 2.5V 抵抗だけで狙った電圧を作れる (掛け算と割り算だけで計算できる)のが要点 R1・R2 の中点から Vout を取り出す分圧回路 補講 電子回路の基礎
2.1.3 模擬衛星の分圧
2.1.3 模擬衛星の抵抗分圧 電池電圧を分圧してから ADC で測る マイコンが電圧を数値化する ADC には測れる上限がある(模擬衛星は3.3V系) 電池電圧(VBAT)はこの上限を超えることがあり、そのままでは測れない(範囲外・ピンを傷める恐れ) 22kΩ の抵抗2本で1:1に分圧 し、半分にした VBAT_SENSE をADCへ渡す ソフトで読んだ値を 2倍 すれば元の電池電圧が分かる(分圧比が既知だから復元できる) 測れない大きさを、 既知の比で測れる大きさに落とす 模擬衛星MAIN基板:VBAT を 22kΩ 2本で分圧し、VBAT_SENSE として ADC へ入れている 補講 電子回路の基礎
2.1.4 参考:抵抗値の決め方
参考 2.1.4 分圧の抵抗値は「トレードオフ」で決まる 定格・消費電力・寄生成分の綱引きで「ほどよい大きさ」に 大前提:どの抵抗も 定格(耐えられる電力)の範囲内 で使う( P = V² ÷ R ) 大きくしたい:分圧抵抗には常に電流が流れ続ける → 大きいほど 無駄な消費電流が減る (電池で動く模擬衛星では効く) 小さくしたい:大きすぎると配線やADCの わずかな漏れ(寄生成分・2.6) に負けて測定値がずれる 綱引きの結果、模擬衛星では 22kΩ という「ほどよい大きさ」に落ち着いている 「動く」だけでなく 「壊れない・狂わない」 かまで見るのが、根拠を持つ設計 測定精度と消費電力のトレードオフ 測定精度(低い →) 消費電力(大 ↑) 定格の上限(超えると発熱で壊れる) 抵抗 小(例 1kΩ) 高精度だが電力大 抵抗 大(例 1MΩ) 省電力だが精度が低い 22kΩ(採用) 精度と電力の両立点 理想(左下) =省電力かつ高精度 補講 電子回路の基礎
2.1.5 参考:経験則
参考 2.1.5 オームの法則は「経験則」 V = I × R は万能の真理ではなく近似 電磁気の根本原理は マクスウェル方程式とローレンツ力 (深入りしない) オームの法則は、金属など 「ふつうの物質」で成り立つ経験則 電界に押された電子が格子に衝突しながら進む。衝突のしやすさが抵抗(古典的なイメージ) 半導体(まさにLED)では成り立たない → 電圧に比例せず、特殊な曲線を描く 金属内の自由電子のドリフト 電界 E + + + + + + + + e⁻ 全体としてゆっくり一方向へドリフト(衝突の多さ=流れにくさ) 補講 電子回路の基礎
2.2 ダイオード
2.2 ダイオード 電気の「逆流防止弁」 順方向 (決まった向き)には流すが、 逆方向 には流さない 極性(向き) があり、つなぐ向きを間違えると働かない 用途:電源の逆接続からの保護、整流(向きをそろえる) 「一方向にしか通さない」ことが、この部品の存在意義 整流・スイッチング用の定番ダイオード 1N4148 補講 電子回路の基礎
2.2.1 LEDはダイオード
2.2.1 LED = 光るダイオード LEDは、電流を流すと光るダイオードの一種 LED = Light Emitting Diode 。ダイオードなので当然、極性がある 順方向に流したときだけ光る(逆だと光らないし、流れない) 順方向電圧 Vf を超えてはじめて電流が流れ始める(この Vf が、後の 電流制限抵抗の計算 で効いてくる) 模擬衛星のサンセンサ(フォトダイオード)もダイオードの一種 この後 2.2.3 の計算に使う赤色LED OSR5JA3Z74A(秋月電子で人気) 補講 電子回路の基礎
2.2.2 IV特性
2.2.2 IV特性 抵抗は「直線」、ダイオードは「折れ曲がる曲線」 電圧 V 電流 I 抵抗(直線) Vf ダイオード / LED Vf までほぼ流れず 抵抗: 電圧に比例して電流が増える直線(オームの法則どおり) ダイオード/LED: Vf までほぼ流れず、超えると急に立ち上がる曲線 この 急な立ち上がり が、抵抗で電流を制限しないと過大電流が流れる理由 補講 電子回路の基礎
2.2.3 電流制限抵抗
2.2.3 計算例 LED電流制限抵抗を、オームの法則で決める 問題: 抵抗を入れずにLEDを3Vへ直結したら、どうなる? 例:赤色LED「OSR5JA3Z74A」。電源 E=3V、順方向電圧 Vf≈2.0V、流したい電流 I=1mA 抵抗の電圧 3V − 2V = 1V (LEDが2V受け持ち、残りが抵抗に乗る) 抵抗値 R 1V ÷ 0.001A = 1kΩ 電源・抵抗・LEDが一周のループになっている 補講 電子回路の基礎
2.2.4 逆流を防ぐ
2.2.4 模擬衛星のダイオード 電源の逆流を防ぐ(Picoボード上) 信号の一方通行だけでなく、 電源の逆流の防止 にも使える Pico W の電源入力では、 +5V → D1 → VSYS(電源) へ入る このダイオードは、電源の逆流や競合から回路を守る役割 「一方向にだけ流す」性質が、そのまま 電源を守る 働きに Raspberry Pi Pico W の電源入力回路(実際の回路図) 補講 電子回路の基礎
2.3 コンデンサ
2.3 コンデンサ 電気の「小さな貯水タンク」 電荷(電気)を貯めたり放出したりできる。容量の単位は ファラド[F] 比喩: 水を貯めるタンク 。急に水が要るとき、一時的に供給できる 直流(一定の電圧)はある程度貯めると流れなくなるが、 変化には敏感 に応じる 模擬衛星では主に 電源を安定させる ために使う アルミ電解コンデンサ 補講 電子回路の基礎
2.3.1 電源の安定化
2.3.1 コンデンサの主な用途 電圧のふらつきを吸収して回路を安定させる マイコンやセンサは、動作の瞬間に 消費電流が急変 する 電源ラインの近くにコンデンサがあると、急変を吸収して電圧を保つ 比喩:バケツリレーの途中に貯水槽を置くと、波が穏やかになる この用途のコンデンサを デカップリングコンデンサ と呼ぶ(ICの電源ピンのすぐ横で、電源の変動から切り離す) 電源とGNDの間のデカップリングコンデンサが、リプルやノイズを吸収してマイコンへ安定した電源を渡す ※バイパスコンデンサは高周波ノイズをGNDへ逃がす別の役割。構造は同じで「どこで何をするか」で呼び名が変わる 補講 電子回路の基礎
2.3.2 LDO出力
2.3.2 模擬衛星でのコンデンサ LDO出力の安定化に 47μF が入っている 模擬衛星は 電池 → LDO (低ドロップアウトレギュレータ)で安定した電源を作る そのLDOの出力段に 47μF の電解コンデンサ を置いて出力を安定させる 電解コンデンサは 極性あり なので向きに注意(逆だと壊れる。ダイオードと同じ) 「電源を作る所にコンデンサあり」を、実際の回路で確認できる 模擬衛星の LDO 電源回路(出力段に電解コンデンサ) 補講 電子回路の基礎
2.3.3 種類は用途で
2.3.3 コンデンサの種類 いまは「2タイプある」で十分 無極性 セラミック 向きの区別なし。扱いやすい 有極性 電解 逆向きにつなぐと壊れる ことがある。向きに注意 選定は模擬衛星ではハードが設計済みなので理解しなくてよい。将来選ぶ場面が来たら、データシートや定番構成を見ればよい 補講 電子回路の基礎
2.3.4 RCクイズ
QUIZ 2.3.4 抵抗とコンデンサをつなぐとどうなる? 充電時、コンデンサ電圧はどんな曲線で立ち上がる? RC回路。コンデンサは最初 0V。ヒント:空のタンクに水を入れ始めると… A 垂直に跳ね上がる B 直線的に上がる C なだらかに飽和 D ずっと 0V のまま 補講 電子回路の基礎
2.4 MOSFET
2.4 MOSFET 電気信号で ON / OFF できるスイッチ 3本の端子。うち 1本(制御端子)の電圧 でON/OFFを切り替える ここで H/L を使う:デジタルは電圧を2段階── H(High=電源電圧の側)と L(Low=GNDの側) ──で表す(詳しくは後半で) 制御端子を H にすると2端子間が導通、L にすると遮断(タイプにより逆もある) 物理スイッチと違い、マイコンの信号で 高速にON/OFF 。まずは 「電圧で操作する蛇口」 と理解すればよい ハンドル=ゲート(制御端子)。H で開いて電流(水)が流れ、L で閉じて止まる 補講 電子回路の基礎
2.4.1 NchとPch
2.4.1 Nch と Pch 2種類あることが CMOS の鍵 Nチャンネル H で導通 G ゲート H/L で ON/OFF を切り替える入力 D S 電流 Pチャンネル L で導通 G ゲート H/L で ON/OFF を切り替える入力 D S 電流 NchとPchは 互いに逆の動作 。この「逆の性格をもつペア」が、後で出てくる CMOS(Complementary MOS)の材料になる 補講 電子回路の基礎
2.4.2 模擬衛星のMOSFET
2.4.2 模擬衛星のMOSFET 基板上になく、マイコンの「中」にある 模擬衛星の基板に、 単体(ディスクリート)のMOSFETは載っていない だが Pico の中身(RP2040)は、 無数のMOSFETで構成された CMOS つまり 「意識しないが、最も大量に使っている部品」 がMOSFET 今日は回路記号と「スイッチ」のイメージだけ押さえれば十分 模擬衛星の頭脳 RP2040。この中身が無数のMOSFET(CMOS) 補講 電子回路の基礎
2.4.3 参考:MOSFETの名前
参考 2.4.3 なんでMOSFETっていうの? 名前が、構造と動かし方をそのまま表している Metal - Oxide - Semiconductor Field-Effect Transistor Metal(金属) =ゲート電極の層 Oxide(酸化物) =絶縁膜の層 Semiconductor(半導体) =シリコン基板 Field-Effect(電界効果) =電圧でスイッチを開け閉めする動かし方 略語に出会ったら、まず 元の言葉に戻して意味を調べる 。名前は中身を語っていることが多い 金属(ゲート電極) 酸化物(絶縁膜) 半導体(シリコン基板) プレーナー型MOSFETの断面。3つの層が名前の前半に対応する 補講 電子回路の基礎
2.5 発展1 キルヒホッフ
発展 2.5 発展1:キルヒホッフの法則 回路を厳密に計算する基本法則(存在だけ知ればよい) 第一法則(電流) ある点に 流れ込む電流の合計 と、 流れ出る電流の合計 は等しい I₁ = 3A I₂ = 1A I₃ = 2A 3A = 1A + 2A 第二法則(電圧) 回路を一周すると、 電圧の上り下りの合計は 0 (山登りと同じ) 出発 一周して戻る +5V −2V −3V +5V − 2V − 3V = 0 模擬衛星の単純な回路では、ここまで持ち出す場面はほぼない。興味があれば:この法則はマクスウェル方程式から導ける 補講 電子回路の基礎
2.6 発展2 寄生成分
発展 2.6 発展2:回路図に描かれない「寄生成分」 配線そのものにも、わずかな抵抗・容量が潜んでいる 理想(回路図の世界) ただの「繋がっている線」 抵抗ゼロ・遅れなし 配線は単なる線で、電気は瞬時に、そのまま伝わる。 現実(寄生成分がある) R L C 配線にもわずかな 抵抗 があり、配線間には 容量 が生じる。 ふだんは無視できるが、 I2C(Inter-Integrated Circuit)通信や高速な信号では効いてくる 。「回路図に載っていない要素が、現実の動作を乱すことがある」と知っておく 補講 電子回路の基礎
2.7 発展3 学び方
発展 2.7 発展3:他の部品は、こうやって自分で学べる まず全体像をざっくりつかんで体系を持つ。それが一つひとつを深く理解する土台になる 部品は星の数ほどある。最初にやるのは丸暗記ではなく、 「どんな部品が、どのあたりにあるか」の地図 を持つこと 全体像をつかむのにも、個別を詳しく理解するのにも、 AIを適切に使ってよい ただしAIの答えは仮説。最後は 一次情報=公式データシート で裏を取る(Week 0 の原則どおり) AI以外の入口:部品通販サイト(秋月電子など)の カテゴリ目次 は世の中の部品を俯瞰する地図になる/解説サイトの例:detail-infomation.com 一つひとつを詳しく理解する 気になった部品を掘り下げる(データシート・解説記事・AIへの深掘り質問) 全体像・体系をつかむ(土台) どんな部品が、どのあたりにあるかの地図(通販カテゴリ目次・分野の概観をAIに出させる) AI 両段で使ってよい。ただし答えは 仮説 。裏取りは一次情報(公式データシート)で 補講 電子回路の基礎
2.8 この章のまとめ
まとめ 2.8 この章のまとめ:ここは覚えて次へ 部品の章の核は、この3つ ① 4部品の役割 抵抗 電流を絞る ダイオード 一方向にだけ流す コンデンサ 電源を安定させる MOSFET 電気で動くスイッチ ② オームの法則 V = I × R 分圧もLEDの電流制限も、すべてこの式から計算できる ③ LEDはダイオードの一種 Vfを超えると電流が急に立ち上がる。だから直列に抵抗を入れて電流を制限する 補講 電子回路の基礎
3. 部品をどう繋ぐか
SECTION 3 / 部品の繋げ方 部品が揃ったら、次は「組み立て方」 ここまでで基本部品(抵抗、ダイオード、コンデンサ、MOSFET)が揃った 実際に回路を形にするには、部品を 物理的に繋ぐ手段 が要る まず 「最終形(基板)」 を見てから、 「試作の手段(ブレッドボード)」 へ進む 補講 電子回路の基礎
3.1 PCB
3.1 まず完成形:プリント基板(PCB) 製品の回路は、配線が焼き付けられた基板の上に作る PCB(Printed Circuit Board) :銅の配線が板に印刷・固定された基板 部品をはんだ付けすれば、 頑丈で再現性のある 回路ができる 模擬衛星の本体も、複数のPCBを積み重ねた構造でできている しかし、PCBは 一度作ると配線を変えられない 模擬衛星のメイン基板(MAIN)表面 補講 電子回路の基礎
3.2 なぜ試作が必要か
3.2 なぜ試作が必要か いきなり本番基板を作ると、間違いの修正コストが大きい 設計どおりに動く保証は、作ってみるまでない( 初回から完璧はまず無い ) PCBは修正に時間とお金がかかるので、いきなり作るのはリスクが高い そこで 「何度でも配線を組み替えられる試作の場」 が欲しくなる → その答えがブレッドボード 本番基板(PCB) × 配線は焼き付け済みで変更できない × 作り直しに時間とお金がかかる ○ 頑丈で再現性が高い(本番向き) ブレッドボード ○ 何度でも挿し替えられる ○ はんだ付け不要。間違えても痛くない × 接触が不安定(試作専用・3.7) 補講 電子回路の基礎
3.3 語源と発想
3.3 ブレッドボードの語源と発想 「板に部品を挿して配線する」発想から生まれた 語源: その昔、パンを切る板(breadboard)に部品を留めて回路を組んだ 発想: 部品を挿せる板があれば、はんだ付けなしで試作できて便利 さらに発想: よく使う配線が最初から板に入っていれば、もっと便利 この 「あらかじめ入った配線」 が、現在のブレッドボードの内部構造の正体 ソルダーレスブレッドボード 補講 電子回路の基礎
3.3.1 余談 BBM
余談 3.3.1 宇宙開発では試作品を「BBM」と呼ぶ ブレッドボードは、システム工学の用語にもなっている システム工学では、開発初期の試作モデルを BBM(Bread Board Model) と呼ぶ 語源はまさにこのブレッドボード。形や仕上げにこだわらず、 機能が成立するか を確かめる試作 模擬衛星づくりも、まず動く試作から始め、段階的に仕上げる点で同じ発想 BBM Bread Board Model 粗い試作。機能が成立するかだけを確かめる EM Engineering Model 本番同等の設計で作り、性能を検証する FM Flight Model 実際に打ち上げる本番機 段階を踏んで、粗い試作から本番機へ近づけていく 補講 電子回路の基礎
3.4 内部構造
3.4 ブレッドボードの内部構造 「どの穴とどの穴が最初から繋がっているか」が全て 中央の穴: 縦方向(または横方向)の数穴が一列ごとに内部で繋がっている 端の長いライン: 電源(+)とGND(−)を流すための共通レール 部品の足を 同じ列に挿せば、配線したことになる 繋がっている列・いない列を取り違えると、 回路は意図どおり動かない 内部の導通グループ。同じ色のまとまりが電気的に繋がっている 補講 電子回路の基礎
3.5 配線の例
3.5 配線の例:LED点灯回路を組む 回路図の一周ループを、ブレッドボードの配線に翻訳する 電源レール(+)→ 抵抗 → LED → GNDレール(−)の順に挿す LEDには 極性がある ので、向きに注意(逆だと光らない) 同じ列に挿すことで「繋がった」 ことになるのを意識する これが、 回路図(論理)を実体配線(物理)へ戻す作業 そのもの ブレッドボード上に組んだLED点灯回路(実体配線) 補講 電子回路の基礎
3.6 ショート
3.6 ショート(短絡)の危険と対策 抵抗なしで電源とGNDが直結すると、過大電流が流れる 危険:ショート + − 抵抗なし(R ≈ 0) I = V ÷ R → 巨大 ショート=抵抗なしで+と−が繋がること 電池によっては瞬間的に 数百A を流す能力があり、発熱・発火の危険 対策 配線前に繋がりを確認する 電源を入れる前に見直す 安定化電源を使う 安定化電源の電流制限 設定した上限 上限で頭打ちになり、電流が制限される 電流の上限を設定でき、ショート時も電流を制限してくれる 補講 電子回路の基礎
3.7 過信しない
3.7 ブレッドボードを過信しない 試作専用。動いても「次も動く」とは限らない 構造上、 接触が不安定 で、持ち運ぶと接触不良になりやすい 接触抵抗や配線間の容量が大きく、 高速信号や大電流には向かない 長く挿しっぱなしだとバネが弱り、保持力が落ちる 本番で確実に動かすなら、最終的には PCBやユニバーサル基板へ起こす ユニバーサル基板の例:サンハヤト ICB-288 補講 電子回路の基礎
3.8 ブレッドボードクイズ
QUIZ 3.8 回路図をブレッドボードに起こす この回路図のとおりに繋がっているのは、A〜Cのどれ? 問題の回路図 チェックの観点 ・中央の溝の左右は繋がっていない ・同じ列は内部で繋がる ・部品の両足を同じ列に挿すと短絡する A B C 補講 電子回路の基礎
3.9 この章のまとめ
まとめ 3.9 この章のまとめ:ここは覚えて次へ 組み立ての章の核は、この3つ ① 内部の導通が全て 同じ列は繋がり、中央の溝で左右は切れている ② +と−の直結はショート 過大電流が流れて危険。電源を入れる前に必ず配線を見直す ③ あくまで試作専用 動いても「次も動く」とは限らない。確実に動かすなら基板へ起こす 補講 電子回路の基礎
4. 信号の2種類
SECTION 4 / デジタルとアナログ 信号には2種類ある:アナログとデジタル ここまでは 「電流をどう流すか」 という物理の話だった ここからは 「電気で情報をどう表すか」 という信号の話に移る マイコンやセンサが扱う信号を理解するための、 共通言語 を入れる 補講 電子回路の基礎
4.1 アナログ信号
4.1 アナログ信号 滑らかに連続して変化する量 例:気温、音の大きさ、明るさ。値はなだらかに変化し、 中間値が無限にある 模擬衛星のフォトダイオード(光センサ)が拾う「明るさ」もアナログ量 情報が豊かだが、 ノイズが乗るとどれが本来の値か分からなくなる 例:本来 2.00V のはずが、ノイズで 2.02V や 1.98V に揺れてしまう 時間 電圧 中間の値をいくらでもとる 連続して滑らかに変化するアナログ波形 補講 電子回路の基礎
4.2 デジタル信号
4.2 デジタル信号 H と L の2値しかとらない 中間を捨て、電圧を 「高い=H=1」「低い=L=0」 の2段階だけで扱う 例:3.3V系なら、 3.3V付近を H、0V付近を L とみなす 多少ノイズで電圧が揺れても、 「高いか低いか」の判定は揺るがない マイコンの中は、すべてこの H と L の組み合わせでできている 時間 H L 3.3V 0V 2値の間を切り替わる(中間は使わない) H と L を行き来する矩形波 補講 電子回路の基礎
4.3 なぜデジタルか
4.3 なぜデジタルが選ばれるのか ノイズに強く、情報を正確に保てる アナログ + ノイズ 本来の波形 元の値がどれか分からなくなる 中間値がノイズで埋もれると復元できない。 デジタル + ノイズ 判定のしきい値 H L しきい値の上か下かで、H/L を復元できる HかLかだけなので、少々の揺れでは値が変わらない。 近年は省電力化のため、H の電圧が 5V → 3.3V → さらに低く と下がってきている。だからこそ 「どの電圧をHとみなすか」は機器ごとに決まっている (要データシート確認) 補講 電子回路の基礎
4.4 ADCとDAC
4.4 アナログとデジタルの橋渡し 現実はアナログ、マイコンの中はデジタル。繋ぐのが ADC と DAC アナログの世界 連続的な電圧(現実) デジタルの世界 H/L の並び=数値(マイコン) 1011 0110 ADC アナログ → デジタル変換 DAC デジタル → アナログ変換 ADC(アナログ→デジタル変換) :連続的な電圧を、数値(H/Lの並び)に変換する DAC(デジタル→アナログ変換) :数値を、連続的な電圧に戻す(ADCの逆向き) 模擬衛星では、フォトダイオードの明るさを ADC(MCP3008) で読み取っている 補講 電子回路の基礎
4.5 この章のまとめ
まとめ 4.5 この章のまとめ:ここは覚えて次へ 信号の章の核は、この3つ ① 2種類の信号 アナログ(連続)とデジタル(H/Lの2値)。デジタルはノイズに強い ② 橋渡しは ADC と DAC 現実の量はアナログ、マイコンの中身はデジタル。ADCがアナログ→デジタル、DACがその逆 ③ Hの電圧は機器ごと 模擬衛星は3.3V系。つなぐ前にデータシートで確認する 補講 電子回路の基礎
5. CMOS
SECTION 5 / CMOSデジタル回路 H/L から論理を作る CMOS ここまでで 「MOSFET(スイッチ)」 と 「H/L(デジタル)」 が揃った この2つを掛け合わせると、 計算する回路=デジタル回路 ができる この章は短い:CMOSの正体を一目見て、それが マイコンの中身と入出力の正体 だと知れば十分 補講 電子回路の基礎
5.1 CMOS
5.1 CMOS:NchとPchのペアで論理を作る 逆の性格のMOSFETを組み合わせて、H/Lを反転・演算する CMOS :Nch と Pch を組み合わせた回路方式(今のデジタル半導体の標準) 例:入力 H を入れると出力 L、入力 L を入れると出力 H( NOT=反転 ) これらを大量に組み合わせると、 足し算や記憶 など複雑な処理ができる ここでは 「H/Lを操作する素子が作れる」 ことだけ分かればよい 入力 H 出力 L 入力 L 出力 H CMOSインバータ。入力Hで出力L、入力Lで出力Hに反転する 補講 電子回路の基礎
5.2 集積が計算になる
5.2 H/Lの組み合わせが、やがて計算になる 単純なスイッチを大量に集めると、やがて計算になる 1個 H が来たら L を返す それだけの単純な動作 数十〜数百個 足し算ができる 論理を組み合わせた演算回路 数千万〜数億個 計算・記憶・判断 これがマイコンのチップの中身 1つ1つは「HならL」程度の単純な動作である だが膨大に組み合わせると、 四則演算も、記憶も、判断も できるようになる 「魔法」ではなく、単純なスイッチの集積が計算を生んでいる 補講 電子回路の基礎
5.3 入出力ピンもCMOS
5.3 マイコンの入出力ピンもCMOSでできている チップの中身だけでなく、外の回路との接点も CMOS マイコンの中身は、無数のCMOSの集積だった 外の回路と繋がる 入出力ピン(GPIO)も、同じCMOS回路 でできている 出力: 中のMOSFETがピンを電源側(H)かGND側(L)に繋ぎ替えて、電圧を外へ出す 入力: ピンの電位が H か L かを読み取る 入出力ピンを正しく使うための電気的な作法(Floating・プルアップなど)は、 Week 2 の通信 で根拠から扱う マイコンチップ(RP2040)の内部 CMOSの集積(計算・記憶) 入出力ピンの回路(これもCMOS) 出力段 入力段 MOSFETがピンを 電源側/GND側へ繋ぎ替える ピンの電位が H か L かを読み取る ピン GPIO 出力(H/L) 入力(H/L) 外の回路 LED・センサ など チップ内部の計算回路も、外部との接点である入出力ピンも、同じCMOSでできている 補講 電子回路の基礎
5.4 この章のまとめ
まとめ 5.4 この章のまとめ:ここは覚えて次へ CMOSの章の核は、この3つ ① CMOS = H/Lの論理を作る 逆の性格をもつNchとPchのMOSFETをペアにした回路(インバータはHとLを反転する) ② マイコン = CMOSの集積 数千万〜数億個が集まってできている。計算は魔法ではなくスイッチの集積 ③ 入出力ピンもCMOS 外の回路との接点である入出力ピンも、同じCMOS回路でできている 入出力ピンの電気的な作法(Floating・プルアップ/プルダウンなど)は、 Week 2 の通信 で根拠から扱う 補講 電子回路の基礎
6. ソフトで操る存在
SECTION 6 / マイコンの全体像 電気回路をソフトで操る存在 部品(抵抗、ダイオード、コンデンサ、MOSFET)と、信号(H/L)が揃った 残る問題は 「これらをどうやってソフトウェアから動かすのか」 その接点に立つのが マイコン 。今日の最後のテーマ 補講 電子回路の基礎
6.1 回路とソフトの通訳
6.1 マイコンは「回路とソフトの通訳」である 「ソフトでハードを動かしたい」という要求から生まれた 我々がやりたいこと: センサを読み、計算し、モーターやLEDを制御する それを毎回、専用の論理回路で作るのは大変で、変更もきかない そこで 「プログラムで振る舞いを変えられる小さなコンピュータ」 を回路に置く これがマイコン。 ソフトの命令を、ピンの電圧という物理に翻訳 してくれる ソフトウェアの世界 「LEDを点けろ」という命令 gpio_put(PIN, 1) マイコン 通訳 プログラムで振る舞いを変えられる ハードウェアの世界 ピンの電圧が 0V → 3.3V に変わり LEDが実際に光る 補講 電子回路の基礎
6.2 1チップに統合
6.2 マイコン = CPU・メモリ・入出力が1チップ コンピュータの機能を1つのチップに収めたもの マイコン(マイクロコントローラ) :CPU、メモリ、入出力を1チップに統合 特に 入出力の機能(ペリフェラル)が豊富 なのが特徴 模擬衛星の頭脳 Raspberry Pi Pico W も、このマイコンの一種 ※コンピュータの内部の仕組みや動作原理は Week 1 の講義 で詳しく扱う 1つのチップ(例:RP2040) CPU 計算する メモリ プログラムとデータを保持する 入出力(ペリフェラル) 外の回路と繋がる。マイコンではここが特に豊富 GPIO ADC I2C SPI UART パソコンでは別々の部品が、マイコンでは1チップに収まっている 補講 電子回路の基礎
6.3 模擬衛星での役割
6.3 模擬衛星でのマイコンの役割 Pico W は各サブシステムを束ねる司令塔(C&DH) C&DH(データ処理系) :Pico W が全体の司令塔 ADCS(姿勢制御系) :光センサやジャイロを読み、モーターを制御する Payload(ミッション系) :カメラを制御し、画像を取得する COMM(通信系) :Wi-Fi で地上局とデータをやり取りする これら全てを、 Pico W というマイコンがソフトウェアで束ねる 模擬衛星システム構成図 補講 電子回路の基礎
6.4 チップとボード
6.4 マイコンチップ単体と開発用ボードは別物 「チップ」はCPUそのもの、「ボード」はそれを使いやすくした基板 マイコンチップ単体 RP2040 演算の本体。これ単体では電源もUSBもなく、使いにくい。 例えるなら CPU 。 開発用ボード Raspberry Pi Pico チップに電源回路、USB、ピンを足したもの。 例えるなら CPUを載せたマザーボード一式 。 試作はボードで行い、製品化するときはチップ単体を自分の基板に載せる 補講 電子回路の基礎
6.5 データシートも2種類
6.5 だからデータシートも2種類ある 知りたい情報によって、開くべきデータシートが変わる チップのデータシート チップの内部仕様(Week 1 で読む) ボードのデータシート どのピンがどこに出ているか、電源の仕様など スコープの正しいデータシートを開けること が、これからの最初の関門 間違ったほうを開くと、いくら探しても情報は見つからない ボードのデータシートに載る情報の例(Pico の電源まわり) 補講 電子回路の基礎
6.6 実機での配線
6.6 実機での配線:PicoのGPIOとLEDを繋ぐ Lチカの物理的な配線をもう一度確認する 用意するもの: Pico Wボード、ブレッドボード、LED、抵抗、ジャンパワイヤ 配線の流れ: Pico WのGPIOピン(例えばGPIO 0番)からジャンパワイヤで引き出す ブレッドボード上で抵抗を挟み、LEDの アノード(長い足) に繋ぐ LEDの カソード(短い足) から、Pico WのGNDピンへ戻す これで 「ソフトから電圧を変えられるピン」 を使った一周のループ(回路)が完成する 回路図(作図予定) GPIO 0番ピン → 抵抗 → LED → GND Wokwi で作図し images/led_gpio_schematic.png として配置 GPIO 0番ピンから抵抗とLEDにつないだ回路図 補講 電子回路の基礎
6.7 UF2の書き込み
6.7 ソフトウェアの書き込み:UF2ファイル ビルドしたソフトをハードウェアに送り込む手順 ① ビルド firmware.uf2 PC上でコードから生成される ② BOOTSEL を押しながらUSB接続 RPI-RP2 USBメモリのように認識される ③ ドラッグ&ドロップ .uf2 をコピー 認識されたドライブへ入れる ④ 自動で再起動 プログラムが動き出す あなたの書いたコードで動く コードを書いてビルドすると、 .uf2 という拡張子のファイルができる Pico W の BOOTSEL ボタンを押しながら PCにUSB接続すると、USBメモリのように認識される この一連の作業が 「マイコンへの書き込み(フラッシュ)」 である 補講 電子回路の基礎
6.8 Lチカのコード
6.8 ソフトウェアからハードを操る Week 0 で動かした Lチカのコードを、今の知識で見る // Lチカのコード(抜粋) gpio_init(LED_PIN); gpio_set_dir(LED_PIN, GPIO_OUT); while (true) { gpio_put(LED_PIN, 1); sleep_ms(250); gpio_put(LED_PIN, 0); sleep_ms(250); } あのコードは「魔法」ではなく、マイコンに 物理的な電圧(H/L)を切り替えさせる命令 各行が、 どのピンを、出力にして、HかLにするか を1つずつ指示している この 「ソフトから物理ピンの電圧を操る」 ことが、すべての制御の基礎になる ここではコードの意味だけざっくりつかむ。レジスタの仕組みは Week 1 、C言語の構文は 次の補講 で扱う 補講 電子回路の基礎
6.9 1行がハードを動かす
6.9 C言語の1行がハードウェアを動かす それぞれの行が「マイコンへのどんな指示」になっているか gpio_init(LED_PIN); このピンを使います、という準備 gpio_set_dir(LED_PIN, GPIO_OUT); このピンを「出力」にします、という設定 while (true) { ... } この中をずっと繰り返します(無限ループ) gpio_put(LED_PIN, 1); 電圧を 「高い(H=1)」 に → LEDが点く sleep_ms(250); 250ミリ秒だけ、そのままの状態で待ちます gpio_put(LED_PIN, 0); 電圧を 「低い(L=0)」 に → LEDが消える gpio_put(PIN, 1) マイコンのピン 0V → 3.3V(H) LEDが 実際に光る C言語の1行が、物理的な電圧の変化とLEDの点灯に直結する 補講 電子回路の基礎
6.10 この章のまとめ
まとめ 6.10 この章のまとめ:ここは覚えて次へ マイコンの章の核は、この4つ ① マイコン=通訳 ソフトとハードの通訳。CPU・メモリ・入出力を1チップに収めたもの ② コード=電圧の指示 Lチカのコードは魔法ではなく、ピンの電圧(H/L)を切り替える物理的な指示 ③ チップとボードは別物 だからデータシートも2種類あり、正しいスコープのほうを開く ④ マイコンの 内部構造や動作原理は Week 1 で扱う 補講 電子回路の基礎
7. まとめ
7. まとめ:今日の内容 部品と信号を揃え、マイコンという接点まで来た 回路図 物理の一周ループを、VCC/GND の記号で抽象化した地図 部品 抵抗(電流制限)、ダイオード(一方向)、コンデンサ(安定化)、MOSFET(スイッチ) 信号 アナログ(連続)とデジタル(H/L)。橋渡しは ADC と DAC CMOS 単純なスイッチの集積が計算を生む。マイコンの中身も入出力もCMOS マイコン CPU・メモリ・入出力が1チップ。ソフトとハードの通訳 補講 電子回路の基礎
7.1 次回予告
NEXT / WEEK 1 Lチカを深追いし、ソフトとハードの境界を見にいく 次回やること: Pico を題材に、Lチカのコードが最終的にメモリ(レジスタ)を叩く瞬間を追う 今日の 「コード=ピンの電圧を切り替える指示」「データシートのスコープ」 が前提になる 今日の宿題は、 6章で見た blink のコードを実際に Pico で動かすこと (次のスライド) 分からないことは 「キャッチアップの会」 で遠慮なく質問する Week 1 で追いかける流れ gpio_put(PIN, 1) C言語の1行 メモリ(レジスタ)の書き換え ← Week 1 で深追いするのはここ ピンの電圧が 3.3V に 物理現象として現れる LEDが点灯する 衛星開発ゼミ / ASTROCAMP-SAT
7.2 宿題
宿題 7.2 宿題:blink のコードを動かしてみる 6章で解説した blink を、実際に Pico で動かす ① 配線する(6.6) GPIO → 抵抗 → LED → GND LEDのアノード(長い足)とカソード(短い足)の向きに注意 ② 書き込む(6.7) .uf2 をドラッグ&ドロップ BOOTSEL を押しながらUSB接続して現れたドライブへ ③ 点滅を確認(6.8・6.9) LEDが250msごとに点滅 コードの1行がピンの電圧を切り替えている 提出 点滅している様子を 写真か短い動画で Discord に投稿 する 動かないときの切り分け LEDの向き 抵抗が入っているか 列の導通(中央の溝) GNDに戻っているか 書き込みの成否 動かなくても投稿してよい。切り分けの過程が Week 1 以降の力になる 補講 電子回路の基礎
付録 画像クレジット
付録 画像クレジット(出典) resistor.jpg Haragayato(cropped by hidro)/Wikimedia Commons "Metal film resistor.jpg"/CC BY-SA 3.0 diode_1n4148.jpg Vonvon/Wikimedia Commons "Diode 1n4148.jpg"/CC BY-SA 3.0 cap_electrolytic.jpg oomlout/Wikimedia Commons "47uf Electrolytic Capacitor.jpg"/CC BY-SA 2.0 cap_ceramic.jpg Xofc/Wikimedia Commons "CeramicCapacitor-220nF.jpg"/CC BY-SA 4.0 breadboard.jpg LukeSurl/Wikimedia Commons "Breadboard.JPG"/CC BY-SA 3.0 universal_board.jpg サンハヤト株式会社 ユニバーサル基板 ICB-288 商品ページの商品画像/© サンハヤト株式会社(出典明記のうえ教材で使用) breadboard_internal.png (ネットからダウンロードする汎用イラスト。取得時に作者・出典・ライセンスを確認し、ここに明記する) rp2040_chip.jpg Thomas Glau/Wikimedia Commons "RP2040 Microcontroller (cropped)"/CC BY-SA 4.0 pico_board.jpg Laserlicht/Wikimedia Commons "Raspberry pi pico.jpg"/CC BY-SA 4.0 led_osr5ja3z74a.jpg 秋月電子通商 商品ページ(OSR5JA3Z74A/通販コード111577)の商品画像/© 秋月電子通商(出典明記のうえ教材で使用) mosfet_2sk4017.jpg 秋月電子通商 商品ページ(NchパワーMOSFET 2SK4017(Q)/通販コード107597)の商品画像/© 秋月電子通商(出典明記のうえ教材で使用) 補講 電子回路の基礎